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今年8月上旬、ロンドン各地は度重なる暴動に見舞われた。
「暴動」といっても、実態は路上駐車中の車両に放火する、
家電販売店やスーパーの窓ガラスを叩き割って中に入り、
窃盗行為を行うなどの反社会的行為である。

ロンドン東部の貧困地域トッテナムに住むある黒人青年を
警察が射殺したことがきっかけとなって発生した地元商店街の破壊行為は、
瞬く間にロンドンからイングランド地方各地に拡大した。
ロンドンだけでも3000人以上が逮捕された。

英法務省が9月15日に発表した資料によると、
逮捕後、裁判所に出廷するところまで行った、
暴動参加者の大部分は若者であった。
その半分が20歳以下で、5分の1が10歳から17歳、
31%が18歳から20歳であった。
少年少女及び若年層による反社会的行為は、
ここ何年もの間、英国社会の大きな問題となってきた。

移民や教育程度の低い貧困層が多く住む、
ロンドン東部ハックニーの下院議員ダイアン・アボットは、
複数のメディアの取材に対し、若者たちが破壊行為に走ったのは、
「自分がこの社会と利害関係を持っているという、
感覚を持てないからだ」と説明した。
貧困層の若者たちには高等教育を受ける機会がなく、
働き口を見つけることも困難である場合が多く、
社会的疎外感が破壊行為の背後にある、と。

所得や教育程度が低く、失業が慢性化した一家に育った子どもたちは
自分自身も失業者になる確率が高いばかりか、
犯罪を犯して刑務所に入る確率も高い。
一説には受刑者1人の維持費用は数百万ポンドに上る。
英政府は前政権の労働党政権時代(1997-2010年)から、
こうしたいわゆる「アンダークラス=底辺層」の救済に
力を入れてきたが、それほど成果は出ていない。

長年、都市の貧困地域で取材を続けてきた、
BBC記者マーク・イーストンは、
暴動終息後に書いた記事(BBCニュース、8月11日付)の中で、
多くの少年・少女たちが、「最も関心がある消費社会に
参加する機会を与えられないことに当惑し、
嫌悪感を抱いていた」と報告した。
欲しいものがたくさんあるのに十分なお金が手元になく、
親もそれを与えることができず、お金を稼ぐ機会も与えられていないと。
いみじくも、今回の暴動で暴動者たちが大挙して押しかけ、
破壊・窃盗行為を働いたのは
普段は手に届かない家電製品を置く店やスポーツ用品専門店であった。


<若年層の失業率は過去最高>

英国の雇用市場が
特に若年層に厳しい状態であることを改めて示したのが、
英国家統計局(ONS)が10月に発表した「労働市場統計」だ。

今年6月から8月までの3ヵ月間で、
16歳から64歳までの
雇用可能年齢人口を対象にした失業率は8・1%だが、
対象者を16歳から24歳の若年層に限ると、21.3%に急上昇する。
この年齢層の失業者数は99万1000人。
ONSが若年層の数字を記録し出した1992年以降、最高となった。

ただし、この失業者数には、
学生でパートタイムの雇用を探している、
26万9000人が含まれているため、
学生以外で雇用を必要と考える若者は72万2000人となる。

このほかに、教育、労働、職業訓練のいずれにも参加していない
「ニート=NEET, Not in Education, Employmentor Training」、
状態にある若者たちは
約300万人に上る(「ニート」は、英国では16歳から24歳が対象)。

失業率・失業者数の上昇理由には、
不景気や政府の緊縮財政策(雇用支援政策の縮小あるいは廃止、
公的部門の雇用縮小など)が挙げられる。


<「スキルが不足する若者はいらない」>

日本のような新卒一括採用制度が存在しない英国の雇用者は
若年層をどう見ているのだろうか?
BBCラジオの若者向け番組「ニューズビート」が、
10月17日、英国の大手民間企業50社を対象にした、
雇用に関するアンケート調査の結果を発表した(回答は27社)。

これによると、大部分の企業が、多くの若者は数学や英語(母語)など、
仕事に必要なレベルのスキルを身につけずに
学校を卒業していると見ていた。
「基本的なスキルの欠落と経験のなさ」のため、
若年層の雇用を敬遠していたのだ。
即戦力になりにくい若年層は、大卒という資格があっても、
容易には職を見つけられない状態が続いている。
また、企業側は若者にスキルを身につけさせるのは
学校か税金を使った政府の役目と考えている。

若年層の就職難は高等教育を受けたかどうかに関わらず存在するが、
英国で特徴的なのが社会の底辺層・貧困層が落とす影だ。
貧困のためにあるいは親の教育程度が低いために
子供に高等教育の機会を与えることを度外視している家庭や、
親あるいは祖父・祖母の世代が失業者であったために
「働く」ことの意味を理解しない家庭で育った子供たちは、
仕事に必要なスキル(単純計算を行う、敬語を使う、
他人と臆することなくコミュニケーションを取る、
定時に毎日出勤するなど)、
母語の運用能力(明瞭な発音ができる、正しいつづりで書けるなど)
が低い場合が多い。
雇用市場に参入する以前の段階で、
はじかれ、行き場のない若者たちが少なくない数で存在する。
英社会の闇の部分ともいえよう。

ロンドンでは、10月中旬から
「ロンドンを占拠せよ」運動の参加者が
金融街シティーなどで座り込み運動を開始している。
元々は米国のそして世界の金融の中心地ウォール街で始まった、
貧富の格差と高い失業率への抗議運動「ウォール街を占拠せよ」である。

シティーでは初日3000人ほどが参加し、
イングランド地方各地やスコットランド地方にも広がった。
「金融機関の傲慢さには我慢がならない」、
「私たちの声は小さいかもしれないが、
行過ぎた資本主義への抗議を示すべきだと思った」。
BBCテレビのインタビューに答えていた参加者の声である。

BBCのワシントン特派員キャッティー・ケイは、
米国の抗議デモが暴力行為に走らず、座り込みが主であることに
「やや驚いた」と感想を述べている
(10月13日付、BBCニュース)。
欧州各国では昨年来から、
雇用問題や大規模財政削減への抗議デモが発生しており、
デモ隊が警察隊にゴミ箱や火炎瓶を投げつけたり、
警察側がデモ隊に催涙ガスを発射するなど、
暴力を含む対立となっているからだ。

経済危機状態にあるギリシャの若者の失業率は42・9%、
スペインでは45%にも上る(2011年第2四半期、EU統計局)。
若年層の失業率が経済危機で急速に悪化した。

9月中旬米で始まり、
翌月から英国を含む他国に広がった「占拠」デモと
財政難の欧州各国の抗議デモの共通点は、
自分たちの声が政治に反映されないことへの
国民の怒りの表明である点であろう。

両者の違いは、前者はデモの具体的な目的が明確になっていないが、
後者は政府の緊縮策可決を阻むなど、具体的な目標を持つ点だ。
暴力沙汰になるかどうかも大きな違いとなる。

ギリシャ、スペインほどには英国の若年層の失業率は高くないが、
ロンドン暴動発生後、多くの人が、
これまで十分に取り組んでこなかった若者たちの雇用問題に
改めて注目するようになっている。


http://news.livedoor.com/article/detail/6003824/



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